エチケットの見本
9月5日(月曜日)
先週末に少し遅い夏休みを取り、この数日は携帯に転送されるメールチェックもしないと決めて木曜のお昼頃の新幹線に乗り込みました。
一人分のチケットであれば、当日でも入手可能とみて普段とは異なり、時間にせかされて行動するのも止めました。
大丸の地下で普段は買わない種類のサンドイッチを買って、新幹線が来るまでの間に普段は絶対にしないであろう駅の待合室での昼食。
これで、車内でゴソゴソ音を立てたり、臭いをさせなくても済みます。
一人旅では周囲の話し声や、ビニール袋の音が止まないと絶望的になります。
その予防線を張る為にもグリーン車を使うのですが、4月に乗った北海道新幹線では、長時間これで悩まされ、楽しさ半減でした💦
最近はその時の為に機能の良いイヤフォンを持ち歩くようにしていますが、自分自身が不快指数を上げない為にも気をつかうようにしています。
平日のお昼なので、二人掛けの横は空席かと思っていたら、家族連れの方も通路を挟んでの横並びだったり、車内は満席でした。
わたくしの前の席の方お二人もお連れではありませんでした。
ご年配ながら、とても品のあるご婦人が前の席からこちらにお顔をお出しになって何か話しかけてきました。
???と思っていたら、「座席を倒してもよろしいですか?」と確認をお取りになったのです。
新幹線で移動する際に、この様に挨拶をされたのは初めてでした。
もちろん、「どうぞ」と応えましたが、わたくしの座席は既に快適な角度に倒され、フットレストも目いっぱい上がっていました。
内心、『なんて、感じが良いのでしょう。今度からはわたくしも後ろの方にご挨拶しましょう・・・・』と思ったのでした。
しばらくして、前の席が向きを変え始めました。
『???エッ!お席が向き合わせになるの???』と思ったら先程のご婦人が本を落として見つからないので、座席を動かして探しているのだとか・・・・。
もちろん、その方の横には他人のお客様が座っているので、協力を求めての事ですが、わたくしが感心したのは、横に掛けていた40歳くらいの綺麗な方が、一緒にわたくしとその横の方に「申訳ございません」ときちんと目を見て丁寧な挨拶をなさって一生懸命に床をのぞいたり、椅子の角度を調整しているのです。
わたくしは足を宙に上げながら精いっぱいの協力をしていたのですが、なかなか見つからない様子で、何度も椅子が半回転していました。
近くでは見つけにくかったものが、斜めの男性が見つけて下さり一見落着となったのですが、当事者のご婦人は「お騒がせ致しました。ごめんなさいね」と恥ずかしそうに謝りました。
そして何と、その横の方が一緒に「ありがとうございました」とお礼を仰ったのです。
このお若い方には通路を挟んでお掛けになっているご両親がご一緒でしたので、事の一部始終をご覧になっていました。
本当は自分たちも迷惑に巻き込まれたはずなのに、一切不満そうな表情をされず、最後にはお母様までわたくしと横の方に、「失礼いたしました」と立ち上がってお声をお掛けになったのです。この姿には、座りながらもこちらも恐縮して、背筋が伸びました。
綺麗な言葉を投げかけられると、こちらも綺麗な言葉を使う事になります。
同時に、最近某ホテルでの変な対応や、連日悩まされていた営業の変な電話などでゲンナリしていた気分がスーっと晴れたような気がしました。
綺麗なお嬢さんは、見かけだけでなく、振る舞い迄もが美人だったのです。
そのご両親も紳士淑女の見本の様な方々でした。
人が困っているのを『我が事』の様に捉えて、一緒にできる事をする。そしてその周囲にも限りない気配りを実践する。これが当たり前の行動に見えるのは、エチケットとかマナーの本来の姿を理解して身についていらっしゃるからだと思いました。
『お育ちが良い』とはまさにこの様な行動がとれる方々の事を言うのかと、普段は味わう事の出来ない感動を覚えました。
そして『あ~~この車両に乗り合わせて良かった』とつくづく思ったのでした。
東京を離れ、しばし何もしない時間を過ごし、土曜の夕方の新幹線に乗ったところ、俳優のOさんと隣り合わせになりました。(通路を挟んでの事ですが)
Oさんは声が独特で小さな声でも良く響きます。
舞台公演の話や、集客の事など、関係者と打ち合わせをしているようです。
でも、会話に耳を立てるのははしたないと思って愛用のイヤフォンで音楽を聴いて過ごしました。
東京駅に着いて、Oさんだと分かった他のお客様が声を掛けると、とても上手な対応をなさっていらっしゃいました。
顔を知られていると、何時でもどこでも仕事を強いられているのと同じです。
わたくしが知らん顔をして、過ごしていた事は少しはお役に立ったのでしょうか?
それとも、Oさんは気づいて欲しいと思っていらっしゃったのでしょうか?
やはり、相手は有名人。微笑みながら『あなたの事は存じ上げていますよ』というアイコンタクトでのメッセージを伝えるのがエチケットだったかも知れません。