5月30日(水曜日)
以前、父が好きで飼っていた金魚が大きく育ち、そのうちのシルバーブラックと鮮やかなオレンジの琉金二匹を分けてもらい、黒の金魚には『タローちゃん』オレンジの金魚には『ハナちゃん』と名前を付け、優雅になびく尾びれの美しさにウットリし、楽しませてもらいました。
オス・メスの区別もつかないのに、勝手に男名、女名を付けるなんて完全に色のイメージに支配されている事がわかります。
さて、薬局の店頭にはお客様から頂戴したグッピーが何年にもわたり子孫を増やし、今も繁殖し続けています。
欲しいと仰る方には差し上げるのですが、生き物を飼うのは実に細やかな配慮が必要です。
今日、業務手順書の見直しをしていたところ、項目の一つに『グッピーの餌』というのがあり、これは何を示すのかを確認したところ、改めて餌やりの事だと分かりました。
ではどのくらいの量を何回あげるのか?それは記されていませんでした。
わたくしが父から金魚をもらい受けた時に、初めに聞いたのが餌の量と回数です。
父は『そんなに神経を使わなくてもいいよ。でもやりすぎると水が直ぐ汚れるから』と言ってくれました。
薬局にいるグッピーは子供で5mm、大人サイズで1.5cm程度でしょうか?
どのくらいあげるの?と聞くと人によって測り方が違う事が判明。
一人は『一つまみぐらい』
一人は『蓋をはかりにしてこれくらい…』
うちのグッピー達は餌当番の人によって食べられる量が違っていたのですね。
ちなみに、一つまみ・・・・とは何本の指でつまむのかを聴いてみたところ、2本派と3本派に分かれました。一般的には親指、人差し指、中指の3本でつまむ量を一つまみというそうです。
グッピーちゃんの餌はほんの一例ですが、業務の手順書・指南書は口頭で伝えなくてもそれだけ読めば済む事、見れば出来る事が書かれていれば良いのです。
細かな事は補足や説明が必要でしょうが、新人さんがその部署に来た時に忙しそうにしている先輩に一々『グッピーの餌はどこにあるんですか?』『どのくらいあげればいいんですか?』と聞かなくても済む様に、餌の保管場所と一回量は示しておきたいところです。
この頃のすし職人さんたちは数か月間、みっちり勉強して(修行ではなく)直ぐに開業されるのが当たり前になっているとの事です。
職人さんの世界では、手取り足取り教えるなんていう事は無かったようです。
ましてや、自分が何年もかけて身に着けた技術をそうそう後から来た新参者に伝えるなどあり得ないというのが当たり前です。
しかしこの数年の間に寿司職人を育成する学校が出来、覚えるべき事は全て文字に起こしてマニュアル(教科書)にしています。
朝から晩までずっと実習を繰り返します。
壁には、『三枚おろし』の手順が絵や写真で示されています。
口で説明されながら、目でも魚のさばき方が分かるように工夫されています。
洗い物や、下働きでほとんどの時間を過ごす職人の卵は包丁もまともに持たせて貰えないので、数年、10年修行が必要なのが当たり前に思えてきます。
私たちの業務も同じです。
先輩から口頭で伝えられて来た事を次の人にも口頭で伝える。
これを続けているといつの間にか本来の目的から仕事のあり方がズレてくるのがわかります。
何だか変だな?と確認すると伝え方、受けとめ方がそれぞれだと知ります。
そして、一番見直さないといけないと感じる事が『〇〇さんにそう言われた』と過去の伝達が今の仕事の全てになっている事です。
言われたから続けている。
一見素直な仕事ぶりに見えますが、自分の頭で考える、このままでいいのか?と疑問を持つ感覚が育たないと仕事の成長は有りません。。
少なくても文字に落とされていたら、聞いた、聞かない、言った、言わないのやり取りが無くなり、業務の見直しや改善もしやすいのです。
経営者の仕事の一つには社員の成長を助ける事が有ります。
仕事が上達する事が面白いと実感してくれる為にも基本をしっかり伝える事が大事だと思います。
色々と口出しすると、嫁イビリや婿イビリしている様な錯覚を覚え始めますが、嫌われて本望です。
当たり前の事を当たり前に出来る様になってもらえる事。それががわたくしの求めている事なのですから。